株主総会とは【オーナーと経営者を経験してわかる重要性】

経営

株主総会とは、株主を招集して開催する会議のことです。

株式会社における最高の意思決定機関です

株主総会は、 株主の考えを会社経営に反映させるための場です。

まだ設立して数か月しかたっていなくても、株式会社は法律によって定められている株主総会を開催しなければなりません。

株主総会議事録を作成して、保管しておかなければなりません。

自らが出資であり、同時に社長である、という場合でも同様です。

株式会社の所有者は株主です。経営者は株主に選ばれて経営を任されています。

しかし、普段、株主は会社の経営状態を把握していないので、株主総会という場において、会社経営に重要な事柄の意思決定を行うために、株主または経営者から議案を出して、株主総会の場で決議をします

さらに、この記事のまとめには、当事者の一人として上場経験2回、間接当事者として上場経験複数回、会社設立や組織変更を自ら行った経験複数回(たぶん10回以上)があるからこそ、言えることを書きました。

税理士・会計士・弁護士の方々は、殆どが法律やルールの説明になっていると思います。

この記事を読むことで、出資比率・定款の内容・株主総会の議案や運営・等々を考える上で参考になれば幸いです。

株主総会に関わる法律的なことは、必ずご自身で当該機関や資格を保有している方に確認をして、その時点での正確な情報をください。

  1. 株主総会を開催する理由
    1. 株主の「自益権」と「共益権」
      1. 自益権
      2. 共益権
  2. 株主総会の種類
    1. 定時株主総会
    2. 臨時株主総会
  3. 株主総会で決めること
    1. 会社の根幹に関わる事項
    2. 会社の役員に関する事項
    3. 株主の利害に大きく関わる事項
      1. 中小零細企業のオーナー株主なら総会で決めることを拡張しておく
  4. 株主総会は多数決
    1. 欠席者の議決権は
  5. 株主総会決議の種類
    1. 普通決議
    2. 特別決議
    3. 特殊決議
      1. 発行している全ての株式を譲渡制限株式とする定款変更を行う場合
      2. 株主ごとに異なる定めを設けられる「属人的株式」を設定する場合
        1. 議決権定足数一覧表
  6. 株主総会を開催する
    1. 株主総会を招集する目的
    2. 株主総会招集の決定(会社法第298条)
    3. 株主総会の招集通知をする
      1. 株主総会招集期限一覧表
      2. 公開会社
      3. 非公開会社(取締役会設置)
      4. 非公開会社(取締役会非設置)
      5. 招集通知から開催日までの日数の数え方
    4. 株主総会招集通知の方法(会社法第299条)
      1. 非公開かつ取締役会非設置の会社
      2. 非公開会かつ取締役会非設置の会社以外(上記以外)
    5. 株主総会招集手続きの省略
    6. 株主総会招集通知の記載事項と提供書面
      1. 会社法で決められている記載事項と提供書面
      2. 上程する議案に応じた記載事項と提供書面
    7. 株主総会の招集地(開催場所)
    8. 招集手続きの省略
  7. 株主総会の進行
    1. 株主総会の議事進行
    2. 株主総会の議事進行シナリオ
      1. 議長就任
      2. 開会宣言
      3. ルール説明
      4. 本日の出席株主人数、議決権個数、の報告と充足宣言
      5. 監査報告
      6. 営業報告
      7. 議案上程
      8. 審議方式の確認
      9. 質疑
      10. 個別議案採決
      11. 終了宣言
      12. 閉会宣言
    3. 議事録の作成と保存
      1. 株主総会議事録記載事項
    4. 登記事項の変更
    5. 配当金の支払い
  8. 株主総会の運営方法
    1. ロバート議事法
  9. まとめ
    1. もっと詳しく知りたい方へ

株主総会を開催する理由

なぜ、株主総会を開催しなければいけないのか。

それは、会社の実質的な所有者である、株主が持っている「自益権」と「共益権」を実際に行使する場だからです。

株主総会の招集は、会社法296条第一項に「招集しなければならない」と定められています。

株主の自益権と共益権は、法律によって保障されています。

株主の「自益権」と「共益権」

自益権

株主自身の利益のために認められた権利で、株主が会社からお金を受け取る権利のことです。

単独株主権として一人で行使できます。

・「剰余金配当請求権」(会社法105条、会社法453条)
・「残余財産配分請求権」(会社法105条、会社法504条)

が中心となって構成されています。

共益権

株主が会社の経営に参加することを目的とした権利です。

共益権は、一株でも保有していれば認められる単独株主権と、一定数の保有が必要な招集株主権があります。

・株主総会の議決権(会社法105条1項3号)
・決議の取消しを訴える権利(会社法831条)
・議案権(会社法303条)
・総会招集権(会社法297条)
・代表訴訟提起権(会社法847条)
・役員等の解任請求権(会社法854条)

等々、様々です。

以下、簡単に表にしました。

詳しくは政府のWEBサイトや法律書をご覧ください。
参考:電子政府の総合窓口e-Gov

単独株主権
(一株の株主でもOK)
少数株主権
(一定以上保有の株主のみ))
自益権 (1)剰余金配当請求権
(2)残余財産分配請求権
(3)名義書換請求権
(4)募集株式・新株予約権の割当を受ける権利
(5)株式買取請求権
なし
共益権 (1)議決権
(2)定款閲覧謄写権 など
(3)責任追及等の訴え(公開会社:6カ月以上保有要))
(1)株主総会の議題提案権:1%以上保有&株主総会の8週間前まで
(2)株主総会招集請求権:3%以上保有 など
※公開会社:ともに6カ月以上保有要
※会社が応じない場合は、株主自ら招集可能
(3)会計帳簿の閲覧権:3%以上保有

株主総会の種類

株主総会の種類

株主総会には「定時株主総会」と「臨時株主総会」があります。

違いは文字通り、「定期的」に開催する株主総会と「必要に応じて」開催する株主総会、ということです。

定時株主総会

毎事業年度の終了後に、株主を招集して開催します。

法律上で、その招集が義務付けられています。(会社法296条一項)

税金も納税義務があるのと同じく、株主総会も開催義務があります。

つまり、開催しないことは違法です。

臨時株主総会

必要に応じて開催します。

必要があれば、いつでも、何度でも、招集できます。(会社法296条二項)

株主総会で決めること

株主総会で決めること

実は、株主総会では、「議案」という形で議場に上がれば、なんでも決めることができます。

会社法第295条
1.株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。

2. 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

3.この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。

電子政府の総合窓口e-Gov

士業の方々のWEBサイトでは、「会社にとっての重要事項が議題になる」と説明しているものが殆どです。

その理由は、一定以上の規模の会社の場合、細かいことまで議案にして、株主総会で決定しようとすると、あまりにも手間と時間がかかってしまうからです。

会社がある程度の規模になれば、自然なことです。

その場合、次の3つの事項が一般的ですが、これでなければならないというものではありません。

会社の根幹に関わる事項

定款の変更、新株発行、会社の解散、吸収合併契約や株式交換契約の承認、等々です。

会社のルール(定款)、在り方、組織を大きく変更したりする場合は、株主総会での承認が必要です。

会社の役員に関する事項

取締役や監査役などの役員の選任・解任、役員の責任の一部免除、等々です。

株式会社の実質的所有者は出資者である株主です。

経営者である取締役は株主から経営を任されている関係です。

そのため、株主総会では、取締役の選任・解任も行います。

株主の利害に大きく関わる事項

剰余金の配当、株式譲渡制限会社における新株発行、役員の報酬額の決定、等々です。

役員の報酬額を役員自身が自由に決められるなら、不適切な額の報酬 (よく「お手盛り」と言われます) を設定することもできてしまいます。

その為、役員の報酬は株主総会の決定事項のひとつとなっています。

中小零細企業のオーナー株主なら総会で決めることを拡張しておく

議決権の「過半数または3分の2」以上をもつ会社オーナーが、経営者に加わらない場合は、会社定款において、総会での決定事項を拡張しておくと良いです。

株主自らの意見を会社経営にしっかりと反映させたい場合には、経営会議で決めるような事項まで、拡張しておくと良いです。

臨時総会の開催日、株主総会の招集方法、基本的な議題、等々、会社定款に明記しておくことで、株主と経営者と意見に相違があった時などにも、経営者は年に一度の「定時株主総会」まで議論を引き延ばすことはできなくなります。

私自身が、出資者という立場で、複数の会社経営に携わりながら、会社設立や組織変更を自ら行った経験複数回(たぶん10回以上)からの意見です。

株主総会は多数決

株主総会は多数決

株主総会では、「1株1議決権」が原則で、議場に上がった議題を多数決で決議します。

複数の株を合わせて一議決権と定めている場合もあります。

例えば、100株=1単元株の場合は、100株に対して1議決権となります。

欠席者の議決権は

欠席すると決議に参加できないので、出席している株主の多数決により決議することになります。

委任状なしで欠席すると、株主総会で議決権は行使できません。

株主は、いつでも欠席する可能性がありますので、委任状により代理人を立てるのが一般的です。

代理人は正式な委任状を以て認められますが、 自由な代理人指名を認めると株主総会が混乱するおそれがあるため、定款により代理人は株主に限る旨を定めておくのが良いです。

株式会社の任意により、電子投票制度も認められますので、これも定款に盛り込んでおくと良いでしょう。

委任状か電子投票という方法があれば、 この後に説明する「定足数」を満たす必要がある議案の場合は助けになることがあります。

株主総会決議の種類

株主総会決議の種類

決議の種類は、決議の方法ともいわれます。

「普通決議」「特別決議」「特殊決議」の大きく3種類です。

株主総会決議の種類によって「定足数」(決議に必要な最低限の人数)と「決議要件」(決議に必要な賛成数)が異なります。

普通決議

普通決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行います。(参考:会社法第309条1項

役員の選任、解任、役員報酬の決定、資本金の増額、余剰金の配当・処分、等々の特別決議や特殊決議を必要としない議案における決議です。

特別決議

特別決議は、株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行います。
(参考:会社法第309条2項

定款の変更、事業譲渡、解散、会社の分割や合併、資本金額の減少、株式併合、役員などの責任の一部免除、特定の株主からの自己株式取得、等々です。

特殊決議

株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行います。
(参考:会社法第309条3項

発行している全ての株式を譲渡制限株式とする定款変更を行う場合」や「 株主ごとに異なる定めを設けられる「属人的株式」を設定する場合 」、等々です。

発行している全ての株式を譲渡制限株式とする定款変更を行う場合

決議要件は、議決権を行使できる株主の半数(頭数)以上が賛成し、かつ当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

株主ごとに異なる定めを設けられる「属人的株式」を設定する場合

決議要件は、議決権を行使できる株主の半数(頭数)以上が賛成し、かつ総株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要となります。

議決権定足数一覧表
決議の種類定足数決議要件対象議案
普通決議定款に定めがなければ、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数の出席定款に定めがなければ、出席している株主の議決権の過半数 役員の選任、解任、役員報酬の決定、資本金の増額、余剰金の配当・処分、等々
特別決議定款に定めがなければ、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を持つ株主の出席出席している株主の議決権の3分の2以上定款の変更、事業譲渡、解散、会社の分割や合併、資本金額の減少、株式併合、役員などの責任の一部免除、特定の株主からの自己株式取得、等々
特殊決議なし議決権を行使できる株主の半数(頭数)以上が賛成し、かつ当該株主の議決権の3分の2以上 発行している全ての株式を譲渡制限株式とする定款変更を行う場合 、等々
特別特殊決議なし議決権を行使できる株主の半数(頭数)以上が賛成し、かつ総株主の議決権の4分の3以上 株主ごとに異なる定めを設けられる「属人的株式」を設定する場合

株主総会を開催する

株主総会を開催する

株主総会を開催するには、株主を招集することから始まります。

商工会議所や青年会議所などで役員を経験して、会議体の運営を学び、実践したことのある経営者の方は、既によくご存じのことと思います。

大まかには以下の流れで開催して事務手続きを行います。

1.会社として株主総会を招集する目的を決めて、招集を決める
2.株主総会の招集通知を発送する
3.株主総会を開催する
4.議事録を作成する
5.必要な登記事項の変更をする
6.決算公告をする(決算は株主総会の承認が必要です)

株主総会を招集する目的

株主総会の招集を決定する為には、当然に、その招集目的が必要です。

目的は議案という形で作成します。

株主総会に上程されます。

その他の以下の事項も必要です。

・株主総会招集の日時及び場所
・株主総会招集の目的事項(提出議案と関連書類)
・株主総会に欠席する株主が、書面によって議決権を行使できることとする場合や、電磁的方法によって議決権行使で切るとする場合は、その旨
・その他、法務省令で定める事項

株主総会招集の決定(会社法第298条)

取締役会設置会社の場合は、取締役会を開催し、株主総会招集を決定します。

取締役会非設置会社の場合は、取締役が招集を決定します。

取締役が複数いる場合は、取締役の多数決で召集を決定します。(会社法348条

株主総会の招集通知をする

株主総会招集の目的と招集が決定したら、招集通知を行います。

会社法により、株主総会の招集通知を発する期限が定められています

公開会社と非公開会社で異なります。(会社法299条)

株主総会招集期限一覧表

非公開会社公開会社
書面や電磁的方法による議決権行使の定めがある場合【取締役会設置会】
株主総会の日の2週間前まで

【取締役会非設置会社】
株主総会の日の2週間前まで
株主総会の日の2週間前まで
書面や電磁的方法による議決権行使の定めがない場合【取締役会設置会社】
株主総会の日の1週間前まで

【取締役会非設置会社】
株主総会の日の1週間前まで。定款の定めによりさらに短縮可能 。
株主総会の日の2週間前まで

公開会社

株主総会開催日の2週間前までに通知しなければなりません。

公開会社の意味は、株式の全部について譲渡制限のない会社です。

上場会社という意味ではありません。

非公開会社(取締役会設置)

書面投票や電子投票を採用する場合は、株主総会開催日の2週間前までに通知しなければなりません 。

書面投票や電子投票を採用しない場合は1週間前となります。

非公開会社(取締役会非設置)

書面投票や電子投票を採用する場合は、株主総会開催日の2週間前までに通知しなければなりません 。

書面投票や電子投票を採用しない場合は1週間前、または、定款の定めによりさらに短縮可能となります。

招集通知から開催日までの日数の数え方

株主総会の招集通知につていは「発信主義」を取っています。

例えば、ここでいう2週間前とは、

・「発信日」と「会日」を算入しません。
・「株主に到達した日」ではなく、「発信した日」から数えます。

従って、株主総会が6月30日だとすると、6月15日以前に招集通知を発送します。

株主総会招集通知の方法(会社法第299条)

非公開会社で取締役会非設置会社と、そうでない場合とで異なる定めがされています。

非公開かつ取締役会非設置の会社

書面投票や電子投票を会使用しない場合は、招集通知方法について制限はありません。

口頭、メール、電話、等々でOKです。

定款で定めてあれば、3日前にSNS(LINEやメッセンジャー、等々)で召集ということもできます。

非公開会かつ取締役会非設置の会社以外(上記以外)

書面または電磁的方法により、招集を通知できます。

電磁的方法の場合は、株主の同意が必要です。

株主総会招集手続きの省略

株主全員の同意があるときは、 招集手続の省略が可能になります。

招集手続を経ることなく、株主総会を開催することができます。

ただし、書面または電磁的方法による議決権の行使を採用しているときは、招集手続を省略することはできません。

株主総会招集通知の記載事項と提供書面

「会社法で決められているもの」と「上程する議案に応じたもの」を、記載、提供します。

会社法で決められている記載事項と提供書面

「取締役会設置会社」の場合は、「定時株主総会」の招集において、計算書類と事業報告を提供しなければなりません。(会社法第437条)

「書面投票・電子投票、を採用する」「議決権を有する株主が1000人以上存在する場合」のどちらか一方に当てはまる場合は、「議決権行使の為の参考書類」と「議決権行使書面、電磁的手段」を提供する必要があります。

上程する議案に応じた記載事項と提供書面

例えば、「AB事業売却の件」という議案を上程した場合、株主がその賛否を測るには、「本当にAB事業を売却して良いのか?」ということを判断できる資料が必要になります。

「AB事業の採算性は?」「AB事業の売却を何故するのか?」「売却に際しての条件は?」、等々、が読み取れる資料を提供するべきです。

これらの資料がないと、総会決議を見送る理由になります。

また、資料がいい加減であったり、不足があると、正確な判断ができません。

株主総会の招集地(開催場所)

株主総会の招集地について制限はありません。

但し、招集地が過去の株主総会開催場所と著しく離れている場合は、その場所に決定した理由が必要です。(参考:会社法施行規則63条

招集手続きの省略

株主全員の同意があるときは、招集手続きをせずに (省略して) 、株主総会を開催できます。

但し、書面または電磁的方法による議決権の行使を採用している場合は、招集手続きを省略できません。

株主総会の進行

株主総会の進行

時間配分管理がし易い、「一括上程による審議方式」が一般的です。

一括上程による審議方式」と「個別上程による審議方式」があります。

両方が混在する場合もあります。

個別上程方式を取り、ロバート議事法に則って会議運営を行うと、非常に密度の濃い会議ができます。

しかし、協議、審議、承認、報告、討議、動議、等々を然るべく行って 会議を進行していくと、一つの議案に対してかかる時間が非常に長くなります。

株主総会の議事進行

株主総会の議事進行は、議長によって行われます。

以下、「一括上程による審議方式」による「定時株主総会」進行例です。

1.議長就任
2.開会宣言
3.ルール説明
4.本日の出席株主人数、議決権個数、の報告と充足宣言
5.監査報告
6.営業報告
7.議案上程
8.審議方式の確認
9.質疑応答
10.個別議案採決
11.終了宣言
12.閉会宣言

株主総会の議事進行シナリオ

株主総会の議事進行に際して、具体的にどのように進めたら良いのかを書きます。

ここでは、「一括上程による審議方式」の「定時株主総会」を例にしています。

臨時株主総会の場合も、審議する議案が異なるだけで、流れは同じです。

議長就任

【議長候補者】
社長の○○でございます。
本日は、本日は何かとご多用中のところ、株主の皆様には多数ご出席くださいまして、誠にありがとうございます。

当社定款第○○条の定めによりまして、私が議長を務めさせていただきます 。

よろしくお願いいたします。

開会宣言

【議長】
それでは、ただいまより、第○○期定時株主総会を開会いたします。

本日の会議の目的事項といたしましては、お手元の招集ご通知に記載してあるとおりでございます。

ルール説明

【議長】
議場においては、本会議の秩序を保ちますため、議事の進行につきましては、議長である私の指示に従っていただきますようお願い申し上げます。

また株主様のご質問ならびご発言につきましては、監査役の監査報告、営業報告、貸借対照表および損益計算書の報告、決議事項の議案の内容説明が終了した後に、私の指示に従ってなされますようお願い致します。

本日の出席株主人数、議決権個数、の報告と充足宣言

 【議長】
本総会におけるご出席株主数、ならびにその株式数をご報告申し上げます。

本総会にご出席の株主数は、委任状をご提出いただきました方を含め○○名、その議決権個数○○株でございます。

本総会において議決権を有する全ての株主数は○○名、その議決権個数は○○個です。

従って、本総会の各議案を審議するために必要な定足数を満たしていることをご報告申し上げます。

監査報告

【議長】
つづいて、監査役会より監査報告をお願い致します。○○監査役どうぞ。
【監査役】
監査役の○○でございます。

監査役会を代表させていただき、私から監査報告を申し上げます。

当監査役会は、第12期における取締役の業務執行全般について監査を行ってまいりました。

まず会計監査人である坂倉監査法人の会計に関しての監査方法およびその結果につきましては相当であります。

また、会計以外の業務につきましても、法令・定款に適合いたしており不当な事実・事項はございません。

また、本総会の各議案および書類に関しましても、法令・定款に違反する事項および不当な事項はございません。

以上、ご報告申し上げます。

営業報告

【議長】
それでは、○○年○月○日から〇○年○月○日までの第○○期における、営業報告書についてご報告を申し上げます。

お手元の「第○○期営業報告書」をご覧下さい。

(説明に入る)

続いて、貸借対照表の内容についてご説明を申し上げます。

お手元の招集ご通知の○頁をご覧いただきますようお願い申し上げます。

(説明に入る)

続いて 、損益計算書の内容につきましてご説明を申し上げます。

お手元の招集ご通知の○頁をご覧ください。

(説明に入る)

議案上程

【議長】
続いて、第〇号議案から第〇号議案までの各議案を上程させて頂きますとともに、その内容について予めご説明申し上げます。

決議事項につきましては、お手元の招集ご通知記載のとおりでございます。

第〇号議案「○○○の件」につきましては、期末における株主配当金について1株につき〇〇円とすることをお諮りするものです。

お手元の資料○○をご覧下さい。

利益処分案と致しましては、

利益準備金○○円
一株当たり利益配当金○○円
別途積立金○○円
利益処分額合計○○円
次期繰越利益○○円

でございます。

次に、第2号議案「○○○の件」につきましては...

(上記同様)...

以上、ご提案申し上げます。

審議方式の確認

【議長】
この後の進行方法について議場の確認を取りたいと思います。

この場では一括審議方式とさせて頂き、報告事項、ならびに全ての決議事項について、株主の皆様からの質問・ご意見・動議を含めた、審議に関する一切のご発言をお受けいたします。

その終了後は、決議事項につき採決のみをさせて頂きたいと存じますが、ご異議ございませんでしょうか。

拍手にて決を採らせていただきます。

賛成の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

反対の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

白票の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

ありがとうございました。

過半数のご賛同を得ましたので、この方法で進行いたします。

なお、ご質問・ご発言に当たりましては、挙手をお願い足します。

私が指名しましたら、最寄のマイクをご使用の上、ご自分の出席票番号とお名前をおっしゃっていただいてから、要点を簡素に、ご発言くださるようお願い申し上げます。

(具体的ではないご質問、会議の目的と関係ないご質問、説明することにより株主共同の利益を著しく害するご質問、お手元の書類に既に記載済みのご質問、会社の会計帳簿等を見なければお答できないご質問につきましては、却下させていただきます。)

質問審議の終了後は、ご発言はお受けできません。

ご発言を希望される株主の方はすべてこの機会にお申し出頂きますようお願い申し上げます。

質疑

【議長】
それでは、質疑に入りたいと思います。

ご発言のある方は挙手をお願いいたします。

(挙手している人を指す)

出席票の番号と名前をおっしゃってください。
【株主】
○○番の○○です。○○につき、質問です。
【議長】
ただいまのご質問につきましては○○取締役からご説明申し上げます。

○○取締役、ご回答をお願いします。

(回答)

○○取締役、ありがとうございました。

ご質問を頂いた○○様、よろしいでしょうか?
【株主】
はい。

ありがとうございました。
【議長】
それでは、次のご発言のある方、挙手をお願いいたします。

(挙手している人を指す)

出席票の番号と名前をおっしゃってください。
【株主】
○○番の○○です。○○につき…

(発言…)
【株主】
その件につきましては、○○号議案「○○の件」に対する修正動議のご提出という趣旨でよろしいでしょうか?
【株主】
はい、その通りです。
【議長】
ただいま株主より、第○○号議案「○○の件」に関して修正動機が提出されました。

本件につきましては、株主の皆様にご審議賜った上、採決に関しましては、原案とあわせて取り扱いたいと存じます。
 【議長】
それでは、次のご発言のある方、挙手をお願いいたします。

(挙手している人を指す)

出席票の番号と名前をおっしゃってください。
 【株主】
○○番の○○です。○○につき…

(発言…)
【議長】
ただいま、○○番の株主より、議長不信任の動議が提出されました。

私は定款の定めに従って議長を務めさせていただき、公正に議事を進行しております。

依って、ご指摘には当たらないと考えておりますが、その採決を議場に諮りたいと思います。

賛成の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

反対の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

白票の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

ありがとうございました。

反対が過半数となりましたので、ただ今の動議は否決いたします。

このまま、私が議事進行を務めさせていただきます。
 【議長】
それでは、次のご発言のある方、挙手をお願いいたします。

(挙手している人がいない)

他にご質問が無いようですので、報告事項ならびに決議事項に関して、ここで質疑を打ち切り、採決に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか ?

(株主拍手・異議なし発言)

賛成過半数と認め、議案の採決に移らせていただきます。

個別議案採決

【議長】
それでは、第○○号議案「○○の件」の採決を致します。

本議案につきましては、株主より「○○…」とする、修正動議が提出されています。

まずは、会社提案の原案から先に採決を取らせていただきます。

会社原案に賛成の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

反対の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

白票の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

ありがとうございました。

本議案は、賛成多数により会社提案の原案のとおり承認可決されました。

従いまして、先ほど提出された修正動議は、会社提案の原案の可決により否決となります。
【議長】
続いて、第○○号議案の採決に映らさせて頂きたいと存じます。

第○○号議案「○○の件」について、

賛成の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

反対の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

白票の方は拍手をお願いいたします。
(株主の拍手)

ありがとうございました。

本議案は、賛成多数により会社提案の原案のとおり承認可決されました。

終了宣言

【議長】
以上で、本日の目的事項はすべて終了させていただきます。

閉会宣言

【議長】
以上をもちまして、本総会は閉会と致します。

本日は、誠にありがとうございました。

議事録の作成と保存

株主総会終了後は、議事録作成と保存をしなければなりません。

作成した株主総会議事録は本店で原本を10年間、支店でコピーを5年間、保存しなければなりません。

これらは、法律で定められています。

また、保存している株主総会議事録は株主や債権者の請求があった場合は、閲覧・謄写させなければいけません。

決議権行使の代理委任状及び議決権行使は本店に3か月保管し、同様に閲覧・謄写させなければなりません。(会社法318条、310条6項、311条3項、312条4項

株主総会議事録記載事項

一部の主な記載事項は以下の通りです。

法律上の問題が生じないように、詳しくは、会社法施行規則72条3項を確認して議事録を作成してください。

  • 株主総会が開催された日時及び場所(当該場所にいない取締役、株主等が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
  • 株主総会の議事の経過の要領及びその結果
  • 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称
  • 株主総会の議長が存するときは、議長の氏名
  • 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
  • 会社法に定められた一定の内容について、株主総会において述べられた意見又は発言の概要

登記事項の変更

役員変更登記、等々、登記手続きを必要とする事項が決議された場合は、議事録添付して登記変更手続きをしなければなりません。

登記手続きは、本店所在地で2週間以内、支店所在地では3週間以内、と定められています。

配当金の支払い

剰余金の配当を行う場合には、配当通知を株主に送付して、支払い手続きを滞りなく行います。

株主総会の運営方法

株主総会の運営方法

会社の実質的所有者(オーナー)が会社の経営をコントロールできるか否かは、「株主総会」という会議の運営を適切にできるかにかかっています。

株主総会は議決権の多数決によって決議されます。

多数決なので「民主主義」と考えるかもしれません。

しかし、会社経営は経済活動に伴うことですので「資本主義」を元にしています。

従って、基本的には「多くの出資をした人」=「議決権が多い」なのです。

ロバート議事法

株主総会はロバート議事法で運営するのが良いでしょう。

ロバート議事法で株主総会を運営すると、オーナーの会社経営に対する意向を漏れなく経営に反省させることができます。

全ての根底には、株式会社の「所有者は株主(オーナー)」であり、「業務執行役の責任者が経営者」というものがあります。

ロバート議事法は国際会議でも使われている議事進行規則です。

ロバート議事法は、アメリカ合衆国陸軍少佐であったヘンリー・マーティン・ロバートが、アメリカ議会の議事規則を元にして、簡素化し、一般の会議でも用いることができるようも考案したものです。

ロータリークラブ、ライオンズクラブ、青年会議所、等々では、ロバート議事法によって運営されています。

参考:The Official Robert’s Rules of Order Web Site
参考:さぬき青年会議所

参考書籍:市民社会組織のためのロバート議事規則入門

まとめ

株主総会は、事務処理ではありません。

会社の経営や報酬や業務に関して、 株主と経営者がお互いに合意を形成しておく、非常に重要な場です。

株主総会では、会社に関する全てのことを決めることができます。

株式会社の最高の意思決定機関なのです。

しかし、株主総会を事務手続きとして処理している中小零細企業は沢山あると思います。

社長であり、単独株主であれば、会社の唯一の所有者がそのまま経営をしているので、事務手続きとしての書類作成や登記事項の修正や変更だけで問題ありません。

注意すべきは、複数人の株主がいる場合です。

たとえ身内であっても、株主総会をきちんと法律に則って開催した上で事務手続きを行わないと、それまでに会社がとってきた経営戦略、役員報酬、等々、は法律的に無効となってしまいます。

その結果、経営者は役員報酬の返還、損害賠償、背任行為、を問われることになるでしょう。

中小零細企業で従業員数が数十人程度であれば、社長とは別である、会社の実質的所有者(株主)が経営を取り仕切っている場合があると思います

この場合、株主総会を経営会議と同じレベルで定期的に開催することで、オーナーとして会社の経営をコントロールできます。

これを法的に有効にしておくためには、臨時株主総会の定期開催を定款に盛り込み、法律に則ってしっかりと運営し、議事録を作成保管しておくと良いでしょう。

もっと詳しく知りたい方へ

株主総会を深堀していくと、一つや二つのブログ記事では、 とても書ききれません。

当事者の一人として上場経験2回、間接当事者として上場経験複数回、会社設立や組織変更を自ら行った経験複数回(たぶん10回以上)があるからこそ、オーナーとして会社定款に盛り込むべきことや、臨時株主総会をどのように活用するかのノウハウがあります。

特に中小零細企業のオーナーは、ロバート議事法をしっかりと学んでおくべきです。

実際に、自分自身で運営できるノウハウがあれば、オーナー自身が代表取締役を退き、経営の執行を後継者候補に任せて、自分は株主総会を通じて事業の発展に貢献することができます。

株主総会を適切に運営できれば、複数の事業会社を立ち上げて事業を拡大していく場合に、大いに役立ちます。

定款に盛り込むべき内容やロバート議事法の運営について知りたい経営者の方は、下記のLINE@よりご連絡ください。

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